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【小説】『旅のラゴス』筒井康隆_ちょっとした時間に読めるSF旅行記

『旅のラゴス筒井康隆 新潮社

オススメ度★★★★☆

 

「少し時間ができたから、紅茶でも淹れて、SF小旅行に出よう」

そんな感じで読むのにちょうど良い一冊。

 

主人公ラゴスの旅の過程を描いたSF旅行記的な作品。

一章ごとに違った出来事になっているので、集中して一気読みというより、ちょっとした隙間時間に一章ずつ読んで楽しめる。

 

これは私の想像であるが、描かれている世界は、近代文明が滅び知識や技術が退化してしまった、人々の未来なのかもしれない。

退化の代償(?)として、登場する人物の中には、「転移」「飛行」「壁抜け」「読唇術」などの特殊能力を扱える者も存在する。

それが物語の良いスパイスとして登場するのだが、ネタバレになってしまうので、どんな形で描かれているかは是非、読んでほしい。

皆さんの興味を引くための材料として少しだけ紹介するとすれば、主人公のラゴスは、頭が良く温厚でモテる上に、ジジイになっても女のことを忘れられない”たらし”であるが、とても魅力的である、とだけお伝えしておく。

 

筒井康隆氏の文章は、決して簡単ではないのだけれど、なぜかスッと身体に馴染むので好きだ。この文章力はちょっとやそっとで身につくものではなく、熟練の技なのだろうと思う。

 

 

旅のラゴス(新潮文庫)

旅のラゴス(新潮文庫)