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読んだ本とか観た映画とか

【小説】『medium 霊媒探偵 城塚翡翠』相沢沙呼_最終話でぶっ壊れやっほいミステリ

『medium 霊媒探偵 城塚翡翠 相沢沙呼 講談社

満足度★★★★★

medium 霊媒探偵 城塚翡翠 | welle design

 

medium 霊媒探偵城塚翡翠

medium 霊媒探偵城塚翡翠

 

 

 

はい。また懲りずに「心霊×探偵」を読んでしまった。

もう、擦られまくっている掛け合わせであろうが、個人的には至高の掛け合わせだと思っておる。好き。

 

このミステリーがすごい!2020版」で第1位を獲得した作品なので、面白くないわけがないだろうし、なんといっても装画が遠田志帆さん。大好き。

遠田志帆さんといえば、最近、綾辻行人著『Another 2001』の書影が公開されていて、たまらんかった。思わずデスクトップの壁紙に設定しちゃったくらい震えた。これね↓

 

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そんなこんなで、書店で平積みされていた発売当初から、これは読まねばと思っていて、でも単行本は重くて手が疲れるし、文庫が出るまで待とうかと逡巡していたところに、「あ、そや、Kindleで読めばいいやん」と購入してしまったというどうでもいい経緯がある。

 

 

以下、感想。

なるべくネタバレしないように頑張るけども、まっさらな気持ちで楽しみたいのなら、こんな文章読んでおらずに、すぐに購入するが良い。面白いのは保証する。

 

本書は、全4話(章)と各話間のインタールード(間奏)で構成されている。 

3話までは、探偵役の主人公、ミステリ作家の香月史郎と”霊媒の美少女”城塚翡翠が、協力して殺人事件を解決に導く過程が描かれているのだが__。

 

第1話を読んで__「あれ、これ連作短編なのか? それにしても……」

第2話は読んで__「ライトだ……すごくライトだ……」

 

と、途中まで読んで、正直、ガッカリしてしまったのである。

少し前に読んだ『心霊探偵八雲』と似たり寄ったりのレベル。

 ミステリとしても決して”本格”とはいえない代物であるし、なんといっても主人公二人のキャラが痛い。痛すぎる。

まず、城塚翡翠のキャラ設定。

男たちの女性に対する幻想といえば良いだろうか、理想の美少女象を形にしましたみたいな、あざとさ全開のキャラクターである。世の女性が大っ嫌いな女性に違いない。こんなキャラクターを平気で主人公に据えるのは、”童貞”か”こじらせ”のおっさんである。勝手に『Another』の見崎鳴のようなキャラを想像していたので、ものすごく残念。

そして、香月史郎。

なんか俺は大人だから心の余裕があるんだぜ感を醸し出して、カッコつけちゃっているやつ。こちらも”童貞”が理想の大人として考えそうなキャラである。

もしかして、著者の相沢氏はこの香月に自分自身を投影させて、理想の美少女である翡翠ちゃんとちちくり合わせて楽しんじゃってるヤバい人なのではないかと、私はそう思ってしまったのである。

 

「もう、読むのやめようかな……でも、待てよ……?」

心が折れかけた私だったのだが、冷静に考えて、このレベルの小説が「このミス」1位を取れるわけがないのである。絶対に何かある。

ちょっと休憩がてら覗いてみた講談社の公式HPには、全国の書店員さんたちの阿鼻叫喚の推薦文が載っている。うん、間違いなく何かある。

そう思い直して、最後まで読み進めることを決意したのである。

 

結果__。

 

あぁぁぁぁぁぁっ!!!

大変申し訳ございませんでした!!

前言撤回いたします。(土下座)

 

 

最終話、ぶっ壊れ。いい意味で。

皆さんもちゃんとしっかり最後まで読むようにね。

そうじゃなきゃミステリ読むべきじゃ無いよ。

 

【まとめ】

違和感を感じたら、それは絶対に何かあるんだよ。

 

 

medium 霊媒探偵城塚翡翠

medium 霊媒探偵城塚翡翠

 

 

 

 

【小説】『旅のラゴス』筒井康隆_ちょっとした時間に読めるSF旅行記

『旅のラゴス筒井康隆 新潮社

オススメ度★★★★☆

 

「少し時間ができたから、紅茶でも淹れて、SF小旅行に出よう」

そんな感じで読むのにちょうど良い一冊。

 

主人公ラゴスの旅の過程を描いたSF旅行記的な作品。

一章ごとに違った出来事になっているので、集中して一気読みというより、ちょっとした隙間時間に一章ずつ読んで楽しめる。

 

これは私の想像であるが、描かれている世界は、近代文明が滅び知識や技術が退化してしまった、人々の未来なのかもしれない。

退化の代償(?)として、登場する人物の中には、「転移」「飛行」「壁抜け」「読唇術」などの特殊能力を扱える者も存在する。

それが物語の良いスパイスとして登場するのだが、ネタバレになってしまうので、どんな形で描かれているかは是非、読んでほしい。

皆さんの興味を引くための材料として少しだけ紹介するとすれば、主人公のラゴスは、頭が良く温厚でモテる上に、ジジイになっても女のことを忘れられない”たらし”であるが、とても魅力的である、とだけお伝えしておく。

 

筒井康隆氏の文章は、決して簡単ではないのだけれど、なぜかスッと身体に馴染むので好きだ。この文章力はちょっとやそっとで身につくものではなく、熟練の技なのだろうと思う。

 

 

旅のラゴス(新潮文庫)

旅のラゴス(新潮文庫)

 

 

【小説】『心霊探偵八雲1 赤い瞳は知っている』神永学_良くも悪くも非常に軽快な読み心地

心霊探偵八雲1 赤い瞳は知っている』 神永学 角川文庫

オススメ度★★☆☆☆

 

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ビジネス書ばかり読んでいたので、久しぶりの更新。

読書に慣れていない中高生あたりにオススメのライトなやつを一発ご紹介。

 

 

「心霊×探偵」……一定の読書層にとっては素通りできない掛け合わせであろう。

綾辻・京極両氏の著作で育ってきた私にとっても、この掛け合わせは魅力でしかなく、本書はずっと気になっていたのである。

 

ではなぜ今まで読まずにいたのかというと、表紙や題名からして”ライト”なんだろうなという予想があったからで、実際に読んでみても想像の域を越えずといった感想である。

悪い言い方をすると「読み応えがない」が、良い言い方をすれば「非常に軽快な読み心地」である。

 

至極真っ当で少しだけ抜けているヒロインと変わり者の主人公(霊が見える瞳を持つ捻くれ屋)が、1話完結型で事件に巻き込まれ解決するまでを描く。そして、その中で少しだけ垣間見える恋愛感情。

心霊現象が絡むという点で話の進め方は少し違うが、形式でいえば「名探偵コナン」や「金田一少年の事件簿」と同様の王道パターンである。

 

キャラクターとストーリーで楽しませる小説。良くも悪くもそれだけ。

巧妙なトリックもなければ、人物や背景の”深み”のようなものもない。

「サクサク読んで、あー楽しめた、以上」という感じである。

 

これはこれでありだと思うのである。実際に売れている小説であるし。

 

1話目が多分この著者の最初の著作なんだろうけど、自分が小説を書いたらこんな感じになりそうだという予感がして、読んでいるとちょっと恥ずかしくてムズムズしてくる。

こんなことを言うと怒られそうだが、ある程度キャラクター設定とストーリーがちゃんとしていれば売れる小説になるんだなあと思うと同時に、このくらいなら自分でも書けそうという根拠のない自信が生まれてきた。

 

シリーズ物なので、2以降もありますが私は読みません。

漫画みたいにサクサク読める面白さなのでよかったら読んでみるのも良いかもしれません。

 

余談ですが、個人的に、霊は「いるのかもしれないし、いないのかもしれない」という曖昧な部分が一番面白いと思うので、見えてしまっちゃおしめーよ的な感想です。

 

 

心霊探偵八雲1 赤い瞳は知っている (角川文庫)

心霊探偵八雲1 赤い瞳は知っている (角川文庫)

  • 作者:神永 学
  • 発売日: 2008/03/21
  • メディア: 文庫
 

 

【小説】『新世界より』貴志祐介

新世界より貴志祐介 講談社

 

オススメ度★★★★★

 

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ホラー作家として有名な貴志祐介氏のSF大作。文句無しで面白いのでオススメ。

問題、解決、問題、解決、と軽快なテンポでストーリーが進んで行くので、非常に読みやすい。緊張と緩和の連続。海外の大人気ドラマのセオリーと同様である。

 

現在の文明が滅びた未来の日本。人々は神栖66町という注連縄(しめなわ)で囲まれた集落で、バケネズミと呼ばれる生物を使役しながら暮らし、呪力(サイコキネシス)を当たり前のように操る。

 

世界観はSFだが、想像できうる範囲を超えてしまうようなものが登場する、いわゆるSF臭さはあまりなくて、ミステリー味を感じる部分もあるので、あんまりSF得意ではない私でも非常に楽しく読めた。

 

「神栖66町」「呪力」「注連縄」「バケネズミ」「悪鬼・業魔」「風船犬」「ミノシロモドキ」「サイコバスター」などなど、これらは作中に登場する名詞であるが、ことごとくネーミングセンスが日本人的でちょいダサなのが、これまた好ポイントである。

 

物語を通して、この小説で描かれているのは人間の浅ましさ。

呪力という強大な力を頼り、恐れ、過信した人間の浅ましさ。人間は過ちを繰り返す。

 

この小説から学んだこと:

・緊張と緩和はみんな大好き

・テンポが良い小説は良い、どんどん読める

・架空の存在を読者に想像しやすく書くの大事

 

 

ということで、以上。

是非、オモチロイので読んでみてください。

 

 

新世界より(上) (講談社文庫)

新世界より(上) (講談社文庫)

  • 作者:貴志 祐介
  • 発売日: 2011/01/14
  • メディア: 文庫
 

 

 

新世界より(中) (講談社文庫)

新世界より(中) (講談社文庫)

  • 作者:貴志 祐介
  • 発売日: 2011/01/14
  • メディア: 文庫
 

 

 

新世界より(下) (講談社文庫)

新世界より(下) (講談社文庫)

  • 作者:貴志 祐介
  • 発売日: 2011/01/14
  • メディア: 文庫
 

 

【小説】『屍鬼』小野不由美_丁寧な世界観作りで勝利したホラー

屍鬼小野不由美 新潮社

オススメ度★★★★☆

 

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正直、あまり読書をしない人にはオススメできない。

だが、ある程度小説を読める人には是非オススメしたい。

読者を選ぶ小説ではあると思う。

 

まず、どうして読書をしない人にはオススメできないのか述べる。

  1. 長い…長すぎる………。文庫にして全5巻。読了にかなりの時間を要した。
  2. 序盤の世界観描写。舞台となる外場村とそこに住む人々の暮らし、風習・慣習、心情、などがこれでもかと語られている。飽きる人は飽きる。
  3. 作中作として出てくる小説が宗教的で小難しくて読み飛ばしたくなる。
  4. ストーリーの進行が遅い。1巻の最後でやっと動き出す。
  5. 登場人物がめちゃくちゃ多い。「あれこの人、何の誰だっけ?」と何回なっただろうか。

 

転じて、上記はある程度読書する人にはオススメできる理由でもある。

  1. 長い間、屍鬼の世界に浸っていることができる。慣れるとずっと読んでいたい。
  2. 確かに序盤の必要以上とも言える描写で辟易するところはあるが、このおかげで外場村に入り込んだかのように鮮明に、場面をイメージできるようになる。
  3. 作中作を通して主人公の心の空洞が沁みてくる。まるで自分が主人公になったかのように。
  4. ストーリーが動き出してからが超面白い。人がバッタバッタと死んで、そのあとの………。まるでジェットコースターのように、登りを一生懸命に我慢して、下りでダーっと面白い。
  5. 色々な考え方の登場人物が出てきて、それぞれが屍鬼の世界を形作っている。

 

ということで、序盤は退屈かもしれないが、どんどん面白くなる。

ただ読者を選ぶとは思うので、★5はつけられないが、私は非常に好きな部類の作品であった。

 

屍鬼(一) (新潮文庫)

屍鬼(一) (新潮文庫)

 

 

ちなみに、漫画化もされているのでこちらも読んでみたい。

作者は藤崎竜。私は『封神演義』が大好き。

 

屍鬼 コミック 1-11巻セット (ジャンプコミックス)

屍鬼 コミック 1-11巻セット (ジャンプコミックス)

  • 作者:藤崎 竜
  • 発売日: 2011/07/04
  • メディア: コミック
 

 

【小説】『いけない』道尾秀介_工夫と仕掛けでどれだけ読者を楽しませるか

『いけない』道尾秀介  文藝春秋

オススメ度 ★★★★☆

 

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道尾作品で一番最初に読んだのは、最後のどんでん返しが印象的な『向日葵の咲かない夏』というミステリであった。その後も何作か読んだが、今回紹介する『いけない』は雰囲気的にも『向日葵〜』に似たものを感じた。

 

この本の帯の裏側には下記のような記載がある。

 本書のご使用法

・まずは各章の物語に集中します。

・章末の写真をご覧ください。

・隠された真相に気づきましたか?

・「そういうことだったのか!!」

だまされる快感をお楽しみください。

※再読ではさらなる驚きを味わえます。

 

読み方を指定してくる小説もなかなか見ないけど、この本はだまされる本ですよ、ってもう言っちゃってるのがすごい。

ミステリの中には、本編の前に”犯人を見破ってみろよ”という旨の読者への挑戦状が書いてあるものもあるが、似たようなところだろうか。

事前にだまされますよと言われれば、そりゃあだまされないように注意して読みますよ。怪しい言い回しなんかを気に留めながら、これは何かの伏線なのかなとか色んな想像を巡らせて、絶対に作者の思い通りにはならんぞと頑張るわけだ。

 

まあ、結果的に、完全にだまされたよね。 

 

というかだまされない人いるのこれ。そりゃそう読むよ普通。ズルくね!?

そういうレベルのだまされ方をする。

 

だまされすぎて読み終わった瞬間の感想は、「え、どういうこと?」だった。わけわからん状態になったわけだね。

少しさかのぼって読み返して、まさに帯にあったように「そういうことだったのか!」と理解して、くっそーーーと悔しくなり、粗探しを初めて結果的に2回目を読んでいる。そういうトリックだ。

 

はい、そのまんまなんだが、

だまされる快感を楽しみたい方にオススメです。

 

いけない

いけない

 

 

 

 

ここからはミステリ手法的なネタバレがあるため、まっさらな状態で読みたい人は画面を閉じてほしい。

 

続きを読む

ブログを始めるにあたって。

  本を読んですごく面白かったとか、映画を観てすごくグッときたとか、その瞬間は良いのですが、すぐに忘れてしまいませんか?

 ふと、あの本は良かった、あの映画は良かった、よし人に勧めよう、などと思ったとしても記憶が曖昧でその場になってうまく説明ができなかったりしますよね。

 人は忘れる生き物です。今までの生きてきた全てを覚えていたら脳がパンクしてしまいます。だから必然、忘れてしまうものなのです。

 

 その中でも、私は特に忘れやすい体質のようです。

 ちょっと昔のことはすぐに忘れて、どんどんどんどん新しいものを記憶していきます。記憶する分、忘れます。非常に効率的な人間なのです。

 

 だけどね、忘れてしまいたくないことはたくさんあります。

 良い小説を読み終えた時の清々しい感じとか、良い映画を観終えた後のなんとも言えないテンションとか、できれば忘れたくない。細かい内容とかをいつでも心の引き出しから取り出して、うまいこと人に勧められるようにしたい。

 そう、そのためにこのブログを開設しました。出来るだけ忘れてしまわないように。

 

 物事を覚えるには、よっぽど脳が優れていない限り、繰り返し読み返したり見直したりしなければなりません。流石にそれは面倒臭い。一回で覚えたい。

 まあ、そんなうまい話はないんですが、インプットしたことはそのままにせず、アウトプットした方が記憶に残りやすいそうです。

 

 小学生の時、漢字の読み書きはこれでもかとノートに書かされましたよね。ノートのマス目をいかに早く埋めるかの作業になったこともありました。

 受験勉強の時、「参考書は読むだけでなく書いて覚えろ」と塾の先生に言われましたよね。誰に見せるわけでもないのに、いかに綺麗にノートをまとめるか無駄に頑張ったこともありました。

 

 手を動かせと。覚えたものは覚えているうちに吐き出せと。

 つまり、そういうことです。出来るだけ忘れてしまわないように。

 

 そのためにこのブログは開設されたので、95%は自分のためです。

 でも、受験勉強のノートよろしく、無駄に綺麗にブログをまとめるべく頑張りたいと思うので、残りの5%分、一緒に楽しんでもらえれば幸いです。

 

 ブログ名は、「モノガタリ」。

 本や映画やドラマなどの色々な物語(モノ)について、精一杯オススメしたり貶したりして語って(ガタリ)いきたいと思います。

 

 末長いお付き合いを期待して。

 

                                     玖流